2015年3月7日土曜日

書庫(25):東郷茂徳「時代の一面」附録の短歌(Ⅰ)より:本條氏に

あな静か死生一如の坂越へて春の野原に暫したたずむ(野道に独り休息へり)

若き日の望みと過(い)にし現実のくひ違ひたるがいとおもしろし

朝な朝な憂き事の増す世の中と思ひ定めて暮らしきにけり

現し身は牢屋(ひとや)にあれど雄心は翼を高み天かけり行く

久方の大空照す御光に凡てが生り行くさまのめでたき

春過ぎて夏来にけらし世田ヶ谷の杉の木立ゆ雲立ち見ゆる

朝の内に朝顔の苗分ち植ゑ今日一日を心静かに

とりどりに咲きて出づべき花の園たまには遅るゝことのよろしき

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