2015年3月21日土曜日

書庫(27):東郷茂徳「時代の一面」附録の短歌(Ⅰ)より:五月末より七月始に

來むとする凡てを避けず吾れはしも來るが侭に受取るものぞ

さもあれや人類の爲としあれば更に厭はず死の座につくも

百度(ももたび)も死にせしならむ既にわれ神の護りのなかりしなれば

獄卒の仕業如何にも意地わるし虫けらどもと思へばこそ

萬有は空っぽなるぞ汝れの身は水沫(みなは)に過ぎず慾を謹め

人の身は川瀬に浮ぶ水沫(みなは)なり其河水も流れて息まず

死の森はいとも靜けし魔の影ぞ之をみにくゝおそろしくする

我命十度も既に亡びたり神の護りのなかりしなれば

我命あぶなき事の多かりき神の護りのありたればこそ

鐡窓に磨硝子あり遠妻(家人)のしのばむ月も見えがてにして

梅雨の日に爲すこともなく暮らしつゝ思ひ出すことのさも多いかな

あな哀れ相互信頼の心無く唯協力を口ぐせにする

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