2015年4月12日日曜日

書庫(31):東郷茂徳「時代の一面」附録の短歌(I)より:七月二十五日、エヂへ

梅雨明けの獄屋の庭に一本の樫の若葉の照り光る見ゆ

夏の日の輝き照らす白壁の間(と)に生ふる杉に風静かなり

夏の日の傾かぬ間に夕食了(お)へ獨し居れば心静けし

夏の夕獄屋にありて偲ぶかな久爾の木立にかかれる月を

夏の朝澁谷を越へて眺めたる富士すがたのめでたかりしも

鳴るかみは世にも怒るものあるが如とおどろおどろと夜な夜なに鳴る

獄庭のヒマラヤ杉の下枝は雷雨につれて鬼女の如と舞ふ

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