天日を貫く誠はとこしへに滅びぬものを何にか思はん
己れ我れ神になりたる氣持もて世の人々にゆるやかぞあれ
(九月以降の分)
人の世は風に動ける波の如と其わたつみの底は動かじ
世の事は聴きもほりすれわれに世を動かす自由ありたればこそ
我はこゝに慎み居れり但しこれ御國に對するものとこそ知れ
人の世は岩に碎くる水泡(みなは)なれ其の元河(もとかわ)は流れて息まず
世の人の多くは旅路の伴(つ)れなれや朝(あした)に語りて夕に別る
丈夫の力の限り盡し來ぬ獄屋の夜を靜かに眠る
危かる命を各(おの)は生き堪えぬさらによき世にあはざらめやも
時折は高嶺の上に獨り居り眠れる下界を見渡す心地す
鐵窓に來觸る風のさやけきに秋の風の動くを知りぬ
朝毎に空のさやけさ加はりぬ秋の心の動くなるべし
あぢさいの花を見しのち花を見ず秋の野原を只偲ぶのみ
眞心が政事にも行きわたる來らん世こそ待ち遠しかな
神代より黒潮の香に洗われし笠さごの岩神さびて立つ
薩摩瀉黒潮寄する潮の香にますら丈夫は健(たけ)くこそあれ
厄日前頻りに動く雨雲の世界のさまにさもよく似たり
秋雲のとく動くには非ずして人の心の騒ぐなりけり
高原のさやかに澄める秋空の雲の心にわれよく似たり
秋の日の澄める心の深みつゝ憂國の思ひなどかしげしき
運命の逆立つ波を漕ぎ抜けて人の自信は潮(しほ)滿つがごと
0 件のコメント:
コメントを投稿