巨船(おおふね)の沈める後もわだつみは潮干潮滿ち其儘に行く
六十路過ぎ宇宙の姿ひたと見つ愛は進歩の大筋なるぞ
賤やしづしづの小田巻繰り返し同じを生くる更に厭はず
秋の日の清き光りに現し身も塵一つだに留めぬ思ひす
秋の日の澄み渡りたる大空に如來の姿と寫りやもする
休廷后春秋逝きてもきまりかぬむりの裁きの故とこそしれ
「テヘラン」の會合前に我計の行はれしならばと只歎くのみ
(「テヘラン」「ヤルータ」会議に関するホプキンスの手記を読みて)
月淸く薩摩濱邊に友つどい幼な昔を盡きずに語る
城山の崖にかゝりし櫻花あだに匂ひて眺めて飽かぬ
菊の花の咲きつらねたる見晴らしに舞ふや告天鳥(ひばり)の我を忘れて
箱庭に立てる篠のゝ月影に動くすがたのらうたけきかな
夕野の月夜を淸み梅の花小峯の宿に匂ひ渡りつ
つゆ晴れの月夜に咲ける藤の花吹き來る風に水の面に舞ふ
我庭の小隅に咲ける桃の花紅(くれない)匂ひ照りて輝く
颱風の去りたる朝の靜かけくさやけき光り天地に滿つ(九月十七日)
滿天の星を眺めて天地の無限の力をおろがみてあり
世の動き運賦と見べきこと多し末(すゑ)の定めに心騒がず(個人と大衆の関係につき)
冬は來ぬ麻布の児等はまさけくや巣鴨の住居寒さ身に沁み
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